多肉植物の育て方〜初心者でもできる!100%成功する栽培方法のすべて

現在、多肉植物が園芸植物として大流行を見せています。2010年から流行のきざしがあったのですが、2014年からは多肉ブームと呼んでも過言ではないくらいの絶大な人気を獲得しました。もはや、一過性の流行などではなく、2015年ごろにはベランダ園芸・室内園芸の主役となっています。

流行に乗り遅れた…と感じている方も心配は無用です。今からでも、多肉植物を栽培して、ベランダ・室内に独特な世界観を創りだしてみませんか?『風の谷のナウシカ』に出てくる植物…とでも表現するべきでしょうか。奇妙な外観の植物も多いですが、個性あふれる植物たちが織りなす独特の雰囲気は圧巻です。

こちらでは、今から多肉植物を育ててみたい…と考えている皆さんに向けて、多肉植物の育て方に関する基礎知識をお届けします。

  1. まずは入門編!多肉植物の基礎知識
  2. 基礎編!多肉植物の育て方
  3. 実践編!多肉植物を育てるためのポイント
  4. 多肉植物の寄せ植えの仕方は?
  5. 多肉植物の植え替え方法はどうする?
  6. 多肉植物は簡単に増やせる!?〜多肉植物の増やし方
  7. 多肉植物の育て方〜よくあるQ&A

栽培の難易度は低いので、このページを読めば、明日には栽培をはじめることが可能です。居室に緑を取り入れたい…と考えているなら、まずは多肉植物からインドアガーデニングに入門してみませんか?

1.まずは入門編!多肉植物の基礎知識

やはり、自分が栽培する植物の基礎知識くらいは知っておかないと不安です。

まずは、多肉植物の定義を理解することからはじめましょう。何となく耳にする“多肉植物”という言葉。しかし、そもそも多肉植物とはどのような植物を指しているのでしょうか?

1-1.多肉植物の定義とは?

多肉植物というのは、葉・茎・根っこの中に水を溜(た)め込んでいる植物を指す言葉です。そのため、葉・茎などが大きく膨らんでおり、ほかの植物とは異なる独特の見た目をしています。

最も代表的な多肉植物はサボテンです。茎の部分が大きく膨らんで、内部に多量の水を蓄えています。サボテンといえば、“砂漠に生える植物”のイメージが強いでしょう。内部に水を貯蔵できることで、乾燥した砂漠気候をものともせず成長するわけです。

多肉植物にはサボテン科のほか、リュウゼツラン科、トウダイグサ科、ベンケイソウ科など9種類の科が存在しています。細かな種類まで確認してみると、実に8,000種類以上。

サボテン科はアメリカ大陸全体、リュウゼツラン科は北中米を原産地としていますが、トウダイグサ科・ベンケイソウ科は世界中の至るところに分布しています。

1-2.多肉植物とサボテンの違いは?

上述したとおり、生物学的に見ると“サボテンは多肉植物の一種”ということになります。多肉植物にはいくつもの種類が存在し、サボテンはたくさんあるグループの中の1つ…ということです。

しかし、園芸の世界では一般に多肉植物とサボテンを区別します。サボテン科には園芸向きの種類が非常に多く、ほかの多肉植物と分けて考えないと混乱する…というのが主な理由です。

園芸の世界では、トゲがあるか、またはトゲの生え際にある微細な毛-刺座があるものをサボテンとして扱います。すべてのサボテンにトゲがあるわけではなく、トゲの退化した種類もあるため、単純にトゲの有無だけでは判断できません。トゲが退化していても、トゲの名残である刺座があればサボテンの仲間になります。

トゲのあるサボテンにも必ず刺座がありますから、要するに、刺座が判断基準ということです。刺座が存在すればサボテン、存在しなければ多肉植物…と捉えると分かりやすいでしょう。

1-3.多肉植物の種類

多肉植物の種類を考える上では、“科”より狭い“属”という単位を用いるのが分かりやすいと思います。こちらでは、数多くある属の中から、園芸用として人気の高い10種類を紹介することにしましょう。

1-3-1.アエオニウム属

アエオニウム属の多くは、たくさんの葉が花びらのように折り重なっています。葉の色はさまざまで、一見すると花にしか見えません。濃い紫色の葉を持つ“黒法師”、緑色の葉の縁(ふち)だけが真っ赤に染まる“夕映え”などが人気を集めています。

1-3-2.アドロミスクス属

アドロミスクス属は、まるで卵のような球体の葉を持っているのが特徴。立体的な球体の葉は、種類によってさまざまな色彩を帯びています。特に、宝石-オパールのような玉虫色に染まる“ヘレイ”という品種が人気です。

1-3-3.エケベリア属

エケベリア属は、幾重にも折り重なった葉が特徴の品種。葉の形状はバラの花に似ており、見た目重視の方にオススメの品種といえるでしょう。わずかに灰色を帯びた白い葉が特徴的な“リラシナ”、緑色の葉の縁(ふち)が赤く染まり、さらにフリルのように踊っている“パーティードレス”などが人気を集めています。

1-3-4.ガガイモ科

基本的には属で分類してきましたが、ガガイモに関しては科の分類になります。ガガイモ科の多肉植物は、歪(ゆが)んだ円筒状の茎がいくつも放射状に生える…という特徴を持っているものが多いです。一見、グロテスクな形状の品種も多いですが、個性的なインドアガーデニングを目指す方には、かえって魅力的かもしれません。白い繊毛がビッシリと生え、まるで『もののけ姫』に出てくるタタリ神のようにも見える“ピロサス”は個性派の方から人気です。また、細い円筒状の茎がいびつに生えてくる“牛角”も人気品種といえます。

1-3-5.カランコエ属

カランコエ属の多肉植物は、葉の形が変わっています。品種によって形状はさまざまですが、いずれも普通の植物には見られない独特の形状をしているのが特徴。葉が花びら型に折り重なった品種も多く、ラフレシアの花にそっくりな色柄の“フミリス”、ラベンダー色の葉が美しい“白銀の舞”などが人気です。

1-3-6.クラッスラ属

クラッスラ属の多肉植物は、茎・葉の形状が多様です。とても植物とは思えない形状の品種もあり、個性的なガーデニングを実現する上で、強い味方となるでしょう。立体的な葉が幾何学模様を描く“キムナツキー”などは個性的な形状の典型例といえます。植物というより、前衛芸術のアート作品のように見える不可思議な外観が魅力です。あとは、サンゴのように枝分かれしながら伸びていく“ゴーラム”、海ブドウのような茎・葉が生い茂る“若緑”なども、個性を演出する上で魅力的な品種だと思います。

1-3-7.セダム属

まるで木の実のような、小さく立体的な葉をたくさんつけるのが特徴です。赤紫色の葉がブドウのように並んで生える“玉葉”、緑色の細かい葉が密集する“ゴールデンカーペット”などを中心に、根強い人気があります。

1-3-8.ダドレア属

葉の表面に白い粉がつくため、植物とは思えない真っ白い色になります。特に笹(ささ)の葉状の葉が花びらのように折り重なる“仙女盃(せんにょはい)”は圧巻。地球上で一番白い植物と呼ばれることもあり、異世界のような幻想的風景を演出してくれます。

1-3-9.ユーフォルビア属

ユーフォルビア属は種類が多く、品種によって形状はさまざまです。しかし、いずれの品種も一見して植物とは思えないような形状をしており、ガーデニングの主役を張れるだけの個性を持っています。石灰化したサンゴのように、白く枝分かれする“ホワイトゴースト”、パイナップルの実にそっくりな外観の“峨眉山(がびざん)”などが人気の品種です。

1-3-10.リトープス属

リトープス属の外見は、まるで石ころにそっくり…。動物に食べられないよう、石に擬態する品種です。緑色の宝玉にも見える“オリーブ玉”、緋色(ひいろ)の石にしか見えない“日輪玉”など、ほかの多肉植物とは違った詫び寂び(わびさび)ある外観を楽しめます。

2.基礎編!多肉植物の育て方

それでは、いよいよ多肉植物の育て方を解説することにしましょう。まずは基礎編として、全般的な育て方の方向性を説明します。より具体的な方法は後述しますので、まずは栽培の全体像を掴(つか)んでください。

2-1.どこで育てる?多肉植物を植える場所

多肉植物は非常に育てやすく、そう簡単に枯れることはありません。そのため、室内・ベランダ・庭などいろいろな場所で育てているのを見かけることがあります。ただ、品種によっては“夏の暑さに弱い”とか“冬の寒さに弱い”などの弱点を持っているので、品種を選ばず育てたいなら室内がオススメです。室内は極端に高温・低温になりませんから、どんな品種でも問題なく育てることができます。

ベランダ・庭など屋外で育てたいなら、栽培予定の多肉植物がどの程度の気温に耐えられるのか…を確認してください。お住まいの地域の気候面と合致しているようなら、屋外でもOKです。

室内・ベランダ園芸なら植木鉢に植える鉢植えスタイルになりますし、庭で育てるなら多くは地植えになるでしょう。中には地植えに向かない品種もあるので、そのあたりは多肉植物を購入するお店のスタッフに確認しましょう。植木鉢であれば、たいていの多肉植物を問題なく栽培することができます。

2-2.初心者向けの品種はどれ?

多肉植物は内部に水を溜(た)め込むので、あまり水やりをしなくても枯れません。そのため、全般的に育てやすい植物といえます。しかし、今までにガーデニングの経験がゼロという場合、多少の不安を感じるのが普通です。

そこで、こちらでは特に栽培が簡単な品種を紹介したいと思います。以下に挙げる品種なら、植物を育てたことがない未経験者でも問題なく栽培することが可能でしょう。

2-2-1.室内園芸にオススメ!初心者向けの品種

室内で栽培するなら、パキフィツム属の“星美人”、セネキオ属の“グリーンネックレス”、ハウォルチア属の“十二の巻”がいいでしょう。

“星美人”と“十二の巻”は暑さに強く、寒さに弱い品種です。ただ、室内であれば寒さは避けられるので室内園芸に適しています。いずれも直射日光は苦手ですから、窓辺を避けてください。

“グリーンネックレス”は寒さに強いですが、柔らかい日差しを好みます。真夏に日光が当たるとまずいので、やはり室内向きといえるでしょう。乾燥に強い品種なので水やりは少なくて構いません。逆に、水をやりすぎないように注意してください。

“星美人”の生育型は夏型、“十二の巻”は冬型、“グリーンネックレス”は春秋型となっています。次に増やし方ですが、“星美人”は葉挿し、“十二の巻”は葉挿しと株分け、“グリーンネックレス”は挿し木です。挿し木は後述する葉挿しとほぼ同様ですが、茎ごと植木鉢に入れます。

2-2-2.ベランダ園芸にオススメ!初心者向けの品種

ベランダなど屋外で栽培するなら、エケベリア属の“花いかだ”と“グリムワン”、オトンナ属の“ルビーネックレス”、グラプトペタルム属の“ブロンズ姫”、セダム属の“虹の玉”がオススメです。

いずれも、日当たりのいい場所を好む品種。ベランダなど屋外に置きっ放しで構いません。暑さ、寒さの両方に強いですから、夏・冬を越すことも問題なしです。2週間〜1か月に1回、土の表面が湿るくらい水をあげればOK。ほとんど手間もかかりません。

“花いかだ”と“グリムワン”そして“虹の玉”の生育型は夏型、“ルビーネックレス”は冬型、“ブロンズ姫”は春秋型です。増やし方ですが、“花いかだ”、“グリムワン”、“ブロンズ姫”、“虹の玉”は葉挿し、“ルビーネックレス”は挿し木が一般的とされます。

2-2-3.庭での地植えにオススメ!初心者向けの品種

本来、地植えは室内・ベランダより難易度が高いのですが、1つだけ、初心者でも問題なく栽培できる品種があります。セダム属の“メキシコマンネングサ”です。

“メキシコマンネングサ”はとにかく丈夫で強いので、管理はほとんど必要ありません。暑くても寒くても、お構いなしに育っていきます。ものすごい勢いで増える品種なので、屋上緑化などに用いられる品種です。初心者が地植えにチャレンジしても問題なく栽培可能でしょう。

“メキシコマンネングサ”の生育型は春秋型、増やし方は葉挿し・株分け・挿し木の3通りです。

2-3.初心者でも多肉植物を種から育てることは可能?

多肉植物を種から育てる場合、最初から多肉植物用の土を使ってはいけません。多肉植物の種は極小粒です。多肉植物用の土は砂利のように粗いため、小さな種はどんどん下に流れ落ちてしまいます。

目の細かい挿し芽用土の上に蒔(ま)くのがポイントになるでしょう。種のときは乾燥を避けたほうがいいのですが、上から水をかけると種が流れてしまいます。穴の開いた植木鉢の下に受け皿を置き、受け皿に水を入れてください。下から吸い上げるように給水するわけです。

品種により多少の差はありますが、きちんと管理すれば発芽させることは十分に可能。多肉植物は栽培しやすい植物なので、無事に発芽すれば問題なく育つでしょう。

ただ、やはり初心者のうちは苗を購入したほうが簡単です。まずは苗から育てて、多肉植物に慣れてから発芽にチャレンジしてはいかがでしょうか?苗から育てた多肉植物はいずれ種をつけます。自分の育てた植物から採取した種を蒔(ま)いて、次世代を育てる…。このほうが慣れた分、成功率も高いですし、何よりロマンがあると思います。

3.実践編!多肉植物を育てるためのポイント

ここからは、より実践的な栽培方法を解説することにしましょう。多肉植物を育てる際の一般的な手順、さらに注意点をお伝えしていきます。以下のポイントを最後まで読めば、多肉植物を育てるための基礎はほぼマスターしたと考えていいでしょう。

3-1.植木鉢&土の選び方をチェック!

植物を栽培する上で最初に考えるべきなのは、植木鉢と土の選び方です。多肉植物は水が少ない場所で生きていけるように進化した生き物ですから、水が多すぎると根腐れを起こします。なので、植木鉢の中に水が溜(た)まりすぎないように、底に穴が開いたものを選んでください。可能なら、大きめの穴がしっかりと開いているほうが望ましいです。水分が多すぎたとき、しっかりと底から排水されれば根腐れのリスクは低くなります。

多肉植物用の土は、速乾性のあるものがいいでしょう。やはり、水を含みすぎると根腐れの危険があるからです。赤玉土(小粒)を6、軽石(小粒)を3、くん炭(細粒)を1の割合で配合すると、ちょうど多肉植物に適した環境になります。もちろん、市販されているサボテン・多肉植物用土を使っても構いません。

3-2.水やりの頻度&方法は?

水やりの方法は品種によって異なります。多肉植物には夏型種・冬型種・春秋種の3種類があり、それぞれ水のやり方が違うのです。ここでは、それぞれの種別に応じて水やりの方法を解説することにしましょう。

3-2-1.夏型種の水やりはどうすればいい?

夏型種は3月から11月までが生長期、12月から2月までが休眠期です。生長期は、土の表面が完全に乾いてきたら水をたっぷりと与えてください。植木鉢の底から水が流れ出る程度です。逆に、休眠期にはほとんど水を必要としませんので、月1回、少量の水を与えるくらいに留(とど)めます。よほど乾燥している場合を除いては、休眠期の3か月間、水を止めてもいいくらいです。

3-2-2.冬型種の水やりはどうすればいい?

冬型種は、9月から5月までが生長期、6月から8月までが休眠期です。生長期は、土の表面が完全に乾いてきた時点で水を多めに与えます。植木鉢の下から水が流れ出るくらいに水やりをしましょう。休眠期は水をほとんど必要としません。土がカラカラに乾くようなら、表面を軽く湿らせる程度に水を与えてください。ただし、日本の夏は高温多湿なので、水のやりすぎには注意しましょう。

3-3-3.春秋型種の水やりはどうすればいい?

春秋型種は、2月から6月までと、9月から11月までが生長期です。7月から8月と、12月から2月は休眠期になります。生長期には、土の表面が完全に乾いてきたら水やりをしましょう。植木鉢の底から流れてくる程度にたっぷりと与えます。逆に休眠期は水やりを控えてください。あまりに土が干からびるようなら、月1回は少量の水を与えても構いませんが、やりすぎに注意しましょう。休眠期に多量の水を与えるのは根腐れの原因になります。

3-4.多肉植物に肥料は必要なの?

多肉植物は、そのほかの植物に比べて、あまり養分を必要としていません。植え替えを行うとき、土に緩効性化成肥料・腐葉土を混ぜる程度で十分です。ただし、根っこが異常に成長して植木鉢からはみ出しそうになった場合、土の養分が枯渇しています。一回り大きな鉢に植え替え、同時に化成肥料または腐葉土を混ぜた新しい土に交換してあげましょう。

3-5.日光にはどれくらい当てるの?

直射日光への耐性は品種によって異なります。しかし、全般的にいうと、夏場の直射日光はあまり望ましくありません。そもそも、室内園芸に用いる植物ですから、常に直射日光を浴びせる必要はないのです。

基本的には直射日光を避け、日差しが柔らかく当たる場所に置く…といったさじ加減がベストでしょう。日当たり・風通しがそれなりにあれば十分です。原則として、“夏は明るい日陰に置き、冬は日当たりのいい室内に置く”と覚えてください。

3-6.多肉植物の病気にはどんな種類がある?

多肉植物の病気のうち、特に注意するべきものが2種類あります。いずれも、適切な栽培方法を採ることで予防可能ですから、多肉植物を栽培する際の管理方法を知っておくことが大切です。

3-6-1.黒斑病

多肉植物の茎・葉に黒い斑点が生じる病気です。完全に枯れるほどの病気ではありませんが、観葉植物としての見栄えは減退します。いったん、斑点が出てしまうと、消えることはありません。見栄えを維持したいなら、黒斑病を予防することが大切です。

原因は多量の湿気なので、梅雨から夏場に頻発します。高温多湿になる地域、梅雨に雨・曇りが続いたときは要注意。なるべく湿度の低い場所に置くか、扇風機を当てて風通しをよくする…といった方法で予防できます。

3-6-2.根腐病

カビが発生することで、根・茎・葉が傷む病気です。根に好発することから、根腐病と呼ばれます。根がダメになれば枯れてしまいますので、深刻な病気と捉えるべきでしょう。

土が1週間以上にわたって湿ったままになることが主な原因です。加えて風通しが悪いと、さらにカビが生えやすくなります。日本の夏は湿度が高いので、“暑いから…”と多量の水を与えてはいけません。水やりの頻度を守り、風通しのいい場所で育てるのが最大の予防法です。

3-7.土を使わずに育てる方法〜ハイドロカルチャー

室内園芸の場合、“屋内に土を持ちこみたくない”と考える人も多いようです。特にキッチンなどで栽培するときは、土に湧く虫が心配になるのも無理はありません。そこで、こちらでは土を使わずに栽培可能な方法として、ハイドロカルチャーを紹介したいと思います。

ハイドロカルチャーとは、水栽培を意味する言葉です。砂漠気候で育つ多肉植物を水栽培…というのは奇妙に感じるかもしれません。しかし、正しい方法を用いれば水栽培は可能なのです。

まず、多肉植物の根っこをバッサリと切り落としてください。土で育つための根を切らないと、水栽培は不可能です。根を水洗いしたあと、根元付近から切り落としてしまいます。

根をカットしたら、水の入った容器の上に多肉植物をセットしてください。根の切り口が、ギリギリ水面に届く程度の位置に調整します。葉が水に浸(つ)からないように注意しましょう。

すると、根の切り口から新しい根がどんどん伸びてきます。2週間もすれば、白くて細い根が伸びてくる様子を見ることができるでしょう。弱々しく見えるかもしれませんが、水栽培用の根は白くて細いので問題ありません。根の性質が変わっているので、常に水に浸(つ)かっていても根腐れすることはなく、順調に育っていくはずです。

3-8.季節別!多肉植物の注意点まとめ

栽培する上で注意したいポイント、多肉植物の品種によって異なるのが実情です。しかし、大半の多肉植物に当てはまる総合的な注意点…というのも存在しています。こちらでは、季節ごとに“特に注意するべき問題”を簡潔にまとめましたので、ぜひ、参考にしてください。

3-8-1.春・秋は雨が当たらないように注意する!

ベランダなど屋外で育てている場合、春・秋は雨に注意してください。特に9月は降水量が年間を通して最も多い時期です。多肉植物の葉は雨に当たると変色することもありますし、雨が土に染みこめば根腐れのリスクも高まります。

庭・ベランダで栽培しているなら、雨の当たらない場所に置くことが大切。また、土が湿気を吸わないように、風通しのいい(=蒸れない)場所を選んでください。

3-8-2.夏場は直射日光と根腐れに注意!

多肉植物は乾燥・暑さに強い植物ですが、限度はあります。真夏の直射日光に晒(さら)されると、葉焼けが生じる危険性もあるのです。窓辺に置くなら、真夏は薄いレースカーテンなどを用意しましょう。カーテン越しの日光でも、十分に光合成は可能です。

また、多肉植物は本来、砂漠のような気候に適しています。多肉植物は乾燥に強く、多湿に弱いのです。しかし、日本の夏は極度の高温多湿…。夏場は水を与えすぎないように細心の注意を払ってください。“暑いから…”と土が乾いてもいないうちから水をやると、根腐れの原因になります。

3-8-3.冬場は日当たりのいい室内に!

多肉植物は基本的に寒さが苦手です。屋外で越冬できる品種もありますが、あくまでも例外に過ぎません。ほとんどの多肉植物は日本の冬に耐えられないのが実情。また、寒さに強い品種であっても、霜(しも)が降りるような冬の朝に耐えるのは困難でしょう。

冬場はなるべく日光の当たりやすい室内に置いてください。乾燥しているくらいがちょうどいいので、加湿器の近くはNG。日が差し込む窓辺がベストの配置だと思います。

冬の間、あまりにも日に当たらないと“日光に弱い体質”になってしまうので注意。3か月、ずっと日に当たらないような状況で栽培すると、春に日差しが強くなったとき、葉焼けを起こします。冬こそ、最も日光に当てることが重要な季節…と考えてください。

4.多肉植物の寄せ植えの仕方は?

多肉植物を美しく見せるためには、寄せ植えをするのがオススメです。同系統の色でまとめたり、右から左に徐々に色が変わっていくグラデーション配置にしたり、楽しみ方はいろいろあるでしょう。

ポイントは、背の高い植物をなるべく中央に配置し、背の低い植物を外周に配置することです。背の低い植物を真ん中に植えると埋もれてしまい、見栄えがしません。

最初は大きな植木鉢に寄せ植えをして、多肉植物の栽培に慣れてきたら、テラリウム・ブリキ缶など見栄え重視の鉢にチャレンジしてみてください。

注意点としては、夏型・冬型・春秋型といった生育分類を確認することが挙げられます。夏型は夏型同士…というように、同じ種類の多肉植物を寄せ植えするようにしてください。生育型が異なると、水のやり方が変わってきます。違う生育型が同じ植木鉢にまとまっているのでは、水やりの方法を分けることができません。育て方が同じものを同じ鉢に植える…ということです。

5.多肉植物の植え替え方法はどうする?

多肉植物は年1回ほど、植え替える必要があります。同じ鉢植えのまま育てていると、土の水はけが悪化し、根腐れを起こしやすい環境になるからです。また、土の養分もだんだん失われていくので、ずっと同じ土を使うわけにもいきません。

そのほか、植木鉢の底から根が出てきたり、下のほうに生えていた葉が落ちて根が出てきたりした場合も植え替えの時期です。養分が不足すると、植物がよりたくさんの養分を吸い上げるために根を伸ばします。根が発達したということは、養分不足を意味するのです。

植え替えの時期は、なるべく生長期に入った直後にしてください。休眠期に植え替えると枯れる恐れがあります。夏型種なら3〜6月、冬型種なら8〜11月、春秋型種なら3〜4月が、最も植え替えに適したタイミングです。

根に水気があると傷みやすくなるので、植え替えの前は2週間〜1か月ほど水やりを控えてください。根が乾いた状態で、植え替えます。

5-1.多肉植物の植え替え手順

まず、根を傷めないようにそっと多肉植物を取り出してください。根に付着した土を落とし、古い根をハサミで切り落とします。黒ずんだ色をしている根は、古い根と判断して問題ありません。切り口からカビ・菌が入らないように、ハサミは事前に消毒しておきます。

植え替える植木鉢に軽石を敷き詰め、その上に新しい土を敷いてください。高さは3分目くらいです。土を敷き終わったら、多肉植物を設置しましょう。

多肉植物の根の周辺に新しい土を詰めていきます。力は入れず、そっと根を覆っていくのがポイントです。土が乾きすぎていると固定できませんので、少量の水をかけながら植物を固定してください。根が覆われる高さまで土を盛れば、植え替えは完了です。

植え替えたばかりの植木鉢は明るい日陰に置きます。土が乾くまでの間、水やりは控えてください。1週間ほど経過を見て、土の表面が乾いたところで水やりをします。

6.多肉植物は簡単に増やせる!?〜多肉植物の増やし方

栽培した多肉植物を増やしたい場合、どんな方法があるのでしょうか?こちらでは多肉植物の増やし方を解説したいと思います。

6-1.葉挿しによる多肉植物の増やし方

最も簡単な多肉植物の増やし方は、葉挿しという方法です。葉挿しに適している時期は、一般的に春と秋になります。

まず、葉を付け根からもぎ取り、日陰で1週間ほど乾燥させてください。切り口が乾燥したら、鉢・タッパーなどに赤玉土を敷いて、もぎ取った葉を並べます。直射日光の差し込まない日陰で根が出るまで置いておきましょう。

だいたい1か月以内には葉から根が出てきて、葉の表面に新芽が展開してくるはずです。根・芽が出てきたら、すでにもぎ取った葉は多肉植物の新しい株になっています。植木鉢を用意して、土に植え替えれば順調に育っていくことでしょう。

ただし、品種によって葉挿しが可能なものと、不可能なものがあります。ご自身が栽培している品種が葉挿しに向いているかどうかを確認の上で、ぜひ、試してみてください。

6-2.株分けによる多肉植物の増やし方

子株を作って増えていくタイプの多肉植物は、株分けをすることが可能です。親株から子株ができる多肉植物は、植木鉢の中でどんどん増えていきます。適当な時期に株分けをしないと、植木鉢の中に根が詰まってしまい、どんどん窮屈になるのです。

まず、全体を植木鉢から取り出して、子株の根を本体から切り離してください。根を傷めないように、ゆっくりと丁寧に。子株の根を分離できたら、縮こまった細い根はカットします。そのあと、新しい植木鉢に分離した子株を植え替えてください。

切り離したばかりの根は多少、傷んでいます。すぐに水を与えると根腐れを起こす恐れがありますから、1週間ほど様子を見て、土に馴染(なじ)んできたところで水やりをしましょう。

6-3.多肉植物の種を採取して増やす方法

自家受粉する多肉植物であれば、種を採取して再び蒔(ま)く…という増やし方も考えられます。時期の終わった花の内部に種子があるようなら、まずは花ごと採取してください。

種を取り出す前に、コーヒーフィルターをドリッパーにセットして、中に水を入れておきます。準備ができたら、種子が入った花を水の入ったフィルター内に浸(つ)けましょう。

十分にふやかしたら、ピンセットなどを用いて丁寧に中身を取り出します。種子は非常に小さいですが、コーヒーフィルターを通過することはありません。フィルターを持ち上げて内部の水を抜けば、種子が残ります。

あとは、種を発芽させることで、次世代の苗にすることが可能です。多肉植物の実生栽培はそれほど難しくないので、苗から育てた経験を活(い)かして頑張ってみてください。

7.多肉植物の育て方〜よくあるQ&A

最後に、多肉植物の栽培に関するよくある質問をまとめたいと思います。特に多肉植物の初心者が気になる問題点を集めましたので、ぜひ、参照してみてください。

7-1.ヒョロヒョロともやしのように伸びているんだけど……?

本来、太く育つはずの品種が細長く伸びている場合、日光不足です。日照量が足りないために、上に伸びようとしています。

いったん細く伸びた部分が太くなることはありませんので、下のほうを残してカットしてください。場所を変えないと同じことの繰り返しですから、日当たりのいい場所に移しましょう。室内園芸の場合でも、週1日、外で日光浴させるとベターです。

7-2.多肉植物が虫食い状態になっているんですが……?

食酢を10倍に薄めた水溶液を霧吹きに入れ、虫食い部分を中心に吹きかけてみてください。即効性が低いので、何度か繰り返し吹きかけるようにしましょう。だいたい3日に1回ほど、継続的に吹きかけると効果的です。5日ほど様子を見て、虫食い部分が増えていなければ、酢の力で駆除できたと考えて問題ありません。

虫に食われた箇所が回復することはないので、見栄え重視の場合、食われた葉は取り除いてください。

7-3.ちゃんと水をあげているのに枯れてしまったんですが……?

多肉植物の場合、水が不足して枯れる…というのは稀(まれ)です。むしろ、水をやりすぎて根腐れを起こした可能性のほうが高いでしょう。水やりは月に1回程度でも大丈夫なので、むしろ水やり回数を減らしたほうが無事に育つ確率は高まります。

基本的に、土の表面がほぼ完全に乾いてから水をやるようにしてください。表面に湿り気があるようなら、植木鉢内部には相当の水分が残っています。

7-4.植木鉢の土が臭うのですが、どうすればいいですか?

水をやりすぎて根腐れを起こしていないか確認してください。また、有機肥料にカビが発生している可能性もあります。

また、根腐れを起こしていないにもかかわらず、土の臭いが気になってきた…という場合、植え替えをするタイミングです。新しい土を用意して、植え替え作業を行いましょう。

7-5.根腐れしていないし、枯れてもいないのに葉が変色したんですが…?

葉焼けを起こしている可能性が高いです。強い日差しに晒(さら)されると、葉が変色することがあります。人間にたとえるなら、やけどした状態と考えてください。

夏場はカーテン越しに日光を当てるなど、日差しを和(やわ)らげる工夫をしましょう。また、水やりの際、葉に水をかけるのは避けてください。水滴がレンズの役割を果たし、日光が葉に集中することがあります。

葉焼けを起こした部分は元に戻りませんから、見た目が気になるなら除去したほうがいいでしょう。

まとめ

以上、多肉植物を栽培する際の基礎知識でした!

いろいろと注意点を解説しましたが、観葉植物の中では最も育てやすい部類なので、あまり構える必要はないと思います。住まいのグリーンを増やしたい…と考えているなら、まずは気軽に育ててみてください。

  1. まずは入門編!多肉植物の基礎知識
  2. 基礎編!多肉植物の育て方
  3. 実践編!多肉植物を育てるためのポイント
  4. 多肉植物の寄せ植えの仕方は?
  5. 多肉植物の植え替え方法はどうする?
  6. 多肉植物は簡単に増やせる!?〜多肉植物の増やし方
  7. 多肉植物の育て方〜よくあるQ&A

個性あふれる外観の多肉植物をきっかけに、皆さんが室内園芸・ベランダ園芸により深い関心を持てるようお祈りしています!